著者は旧長銀女性エコノミスト第1号。退職後、スタンフォード大学でMBA取得。ウォール街日本人初の証券アナリストを経て、サンフランシスコでコンサルティング、ベンチャーキャピタルに参画、半導体、コンピュータ、ソフトウエア関連企業やM&A、不動産開発業務を行う。日本でもソフトウエア会社経営。
本書で著者は在米26年の経験を通じて学び取ったアメリカを、社会の階層という視点から、多面的、体系的に観察し、豊富な個別事例の紹介を交え、立体的に浮かび上がらせている。併せて、スタートアップ企業の内部から見た、刺激に満ち、楽しく暮らせるシリコンバレーの事業感覚をダイナミズムの根源として紹介している。
所得上位5%の所帯が全米の富の60%を握り、トップ20%が84%を押さえている。日本で問題になりつつある格差は「職業選択と労働報酬」の問題で、アメリカの格差は「資産」の問題である。資本偏在と粗末な公共基礎教育が根底にあるアメリカの格差は、解消が難しいと述べている。
興味ある記述としては
★開拓時代の植民地で最初に財を成した人の中には少なからぬ奴隷商人や海賊がいた。
★富を作ることは悪いことと考える欧州では、特権階級は自分の財産が相続した富であること、家柄を強調する。アメリカではメイキング・マネーこそが良いことで尊敬に値する行為だから、出発点が高かったこと、特権的な階級に生まれたことをアメリカ人エリートは口にしない。
★アメリカが中南米などに「民主主義」を移植する場合、既存の支配構造を「選挙によって選出された政権」に切り替え、さらに「市場主義自由経済」の枠組みとその中で支配層の選挙資金調達の手段を用意する。この結果、時間が経つと政権の腐敗、反政府運動、反米運動が発生する。
★レーガン、クリントン、ブッシュはいずれも大統領選挙資金獲得のため、金持ち優遇政策を取った等である。
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